

山下:専門知識で仕事を取るには、提案力を磨くことです。現状の課題を放置しておけば、どのような問題が発生するのか、仮説をいっぱい作るということです。企業には、ヒトに関するリスクがいたる所に存在します。社労士の専門知識の範囲内にも、安全衛生関連、労災関連、残業管理、社員の入社時退社時、あらゆる切り口から経営者に提案すべき内容があるはずです。経営者が気付いていない社内に存在するリスクや、法改正など知らないうちに抱えてしまっているリスクの解消をしてあげるのです。
インタビュアー:専門家としての知識をフルに活かすということですね。
山下:そうです。そして、そのためには、法改正や制度変更、経済環境の変化に敏感になる必要があります。経営者は売上げを上げることに必死です。法改正や制度変更について、勉強している時間がある経営者はあまりいないでしょう。変化こそビジネスチャンスです。その企業の現状にあった形で、つまり、経営者と同じ目線で、変化への対応について提案する事が出来れば、興味をもってもらえること間違いなしです。


インタビュアー:先生は、提案書の重要性についてもお話しされてますね。
山下:ええ、提案書は人事コンサルタント会社や他の社労士との競合において差別化するために、非常に重要かつ有効な営業ツールとなるからです。訴求効果が高い提案書は、顧問契約獲得の大きな武器になります。ここで重要なことは、その企業が直面する課題にオーダーメイドの提案内容であることです。にもかかわらず、実際には、相手のことよりも、自分がしたいこと、自分が売り込みたいものについて書いている提案書が多く見られます。
インタビュアー:自分本位な提案書では意味がないということですか。
山下:まさにその通りです。


山下:今日の話のまとめ的になるのですが、結局は、経営者とコミュニケーションをいかに取れるか、が、独立開業をして、成功するかどうかを分けます。コミュニケーションとは、会話を指すのではなく、経営者と同じ目線で、経営者が持つ悩み、問題意識を共有し、一緒に悩むことができるかどうかです。そして、その中で問題解決のためにこちらができることを、提案していかなければなりません。これができれば、信頼関係が生まれます。そして、その思いを伝え、最後の一押しをするツール、それが提案書です。
インタビュアー:提案書の持つ本当の意味が分かった気がします。
山下:提案書を書く前から営業は始まっています。経営者との普段の会話すべてが営業です。そのことを理解できれば、独立開業を成功させることは難しいことではありません。